今週のオススメ本

小川未明「赤い蝋燭と人魚」偕成社 赤い蝋燭と人魚

 暗く冷たい北の海に暮らす人魚が自分たち人魚の境遇を嘆き悲しみ、せめて自分の子供だけは幸せに暮らしてほしいと、陸に上がって子供を産み落とす。子供は漁師町に住む蝋燭職人の老夫婦に拾われ、やがてとても美しい娘に成長する。娘は自分なりに両親の仕事を手伝おうと、蝋燭に絵を描き、それはすぐに町中の評判になる。そんなある日、南の国からやってきた香具師が、老夫婦のもとへ大金を持って娘を売ってくれとやってくる。老夫婦は香具師に騙され、娘を売る約束をしてしまう。それを知った娘は泣きながら蝋燭に絵を描き続けた。香具師が娘を連れに来た時、娘は急き立てられて蝋燭に絵を描くことができず、すべて赤く塗りつぶしてしまう。しばらくして、老夫婦の家へ真夜中に蝋燭を買いに一人の女がやってくる。女は赤い蝋燭を手に取り、貝殻のお金を置いて消えた。その夜のうちに天候が急変し、娘を乗せて南へ向かう船は沖合いで難破してしまう。それからというもの、山のお宮に赤い蝋燭が灯った晩は必ず海が荒れ、幾年もせずにその町は滅びてしまった。


 恐らく小学生の頃に教科書で読んだのだと思うが、ストーリーはおろか登場人物さえも覚えていなかった。ただ、主人公の家で「和蝋燭」を作っていたこと、とても哀しいお話だったことだけが記憶にある。今の店で働き始めてから、初めてこの絵本を目にして「これだったのか……?」と買ってしまった。童話といってもとても残酷なお話だから、果たして小学校の教科書にコレが載るのかという疑問はなくもないが、「和蝋燭」の出てくるお話なんて他に読んだことないし。それに小川未明は有名な童話作家らしいので、それでかなと。ただ、どこにも舞台が日本とは書いてないんだよね。多分、教科書の挿絵が和蝋燭に見えたんだな。うん。
 色んな出版社から出てるけど、やはり酒井駒子版がおすすめ。油絵みたいな暗い色使いが……怖いっちゃあ怖いかな……。