今週のオススメ本

ダン・ブラウン著、越前敏弥訳「天使と悪魔」角川書店天使と悪魔(上)天使と悪魔(下)


 何を今更……なダン・ブラウン。「ダ・ヴィンチ・コード」で一躍有名になったラングドンシリーズ1作目。舞台はバチカン法王庁。スイスの科学研究所から盗まれた、恐るべき破壊力をもつ反物質という物体がバチカンのどこかに仕掛けられた。爆発までのタイムリミットは6時間。新しい法王を選出するコンクラーベが始まろうとする中、4人の枢機卿が誘拐され、殺人予告の電話が警備室に届く。研究所の所長から捜査協力を依頼されたラングドン教授と、物質の製作者である科学者ヴィットリアは、秘密結社「イルミナティ」の遺した謎を手がかりに4人の枢機卿の殺害場所と、反物質のありかを探し出そうとする。


 ベストセラーだからって「ダ・ヴィンチ・コード」だけ読んで満足しちゃ駄目です!! 「天使と悪魔」だって同じくらい面白いんです!! どうして2作目が出るまで話題にならなかったのがが不思議なくらいですよ。最初の研究所のシーンはちょっと科学的な講義っぽくて、読みにくい部分もあるかもしれません。でも舞台がバチカンに移ったらもうそんなこと言ってられないです。下巻は一気読み。真犯人には本気で開いた口が塞がりませんよ。あまりにも壮大な自作自演。完璧です、としか言いようがないです。
 ストーリーもそうですが、どうしても注目していただきたいことが一つ。我々は日本語に訳されたものを読んでいるわけですから、面白いかどうかは翻訳者の腕にかかっていると言っても過言ではありません。モノによっては辞書と首っぴきでも原文を読んだ方がいいんでないかと思うようなものもありますし。その点、越前氏はこれ以上ないほど上手い。この本は翻訳物であることを忘れてしまうほど、なめらかな文章で綴られているのです。とっても読みやすい。翻訳物で言葉の意味に突っかからずに読めたのは初めてです。翻訳者はもっと賞賛されてしかるべきです!! 何でこの人、今まで本出してないんだろー……。(今んとこ、ダン・ブラウンの3作品と、ブラッドベリが1冊かな)こんな翻訳物ならいくらでも読めるのに。